コンサートマスターの仕事

2007年7月23日 (月)

数日前の毎日新聞の記事コンサートマスターの仕事 曲解釈し、楽員を統率について。

この記事、記者がオーケストラのコンサートマスターの仕事内容についてプロオーケストラを取材して書いたようである。少々物足りない記事だった。

先ずは誤りに近い内容の指摘から。記事の最初に次のように書かれていた。

コンマスは第1バイオリンの首席奏者で、女性はコンサートミストレス(コンミス)と呼ぶ。

まず、コンマスは第1バイオリンの首席奏者とは限らない。まあたいていはそうなのだが、ソリストがコンサートマスターをやることはある。

それから、最近は女性コンサートマスターを「コンサートミストレス」とは呼ばない。それは、「ミストレス」という言葉にあまりよくない意味があるからだ。たとえばYahoo辞書のとおり。最初の方にある意味が通常使用される意味とすると、女性コンサートマスターにはふさわしくない表現だ。またWikipediaを見れば、「ミストレス」にはSMの意味しか無い。確かに以前は女性コンマスをコンサートミストレスと称していたが、現在は東京のプロオーケストラのホームページを見ると「コンサートミストレス」という言葉はほとんど使用されておらず、「コンサートマスター」になっている。また室内オケでは「コンサートマスター」という言葉を使わずに「リーダー」としている団体も増えているように感ずる。

さて、この毎日新聞記事ではコンマスの地位について一番重要なことの記述が不足している。

コンマスは100人もの楽員を統率し、楽員と指揮者とのパイプ役となり、演奏解釈をめぐって指揮者と交渉しなければならないこともある。卓越した技術と同時に、求められるのがリーダーシップ、そして人間性。

とある。まあそうなのだが、コンマスとは、「オーケストラ側の音楽総責任者」なのだ。これが一番重要なポイントだ。だから記事のとおり楽員と指揮者のパイプ役もやらなければならない。場合によっては指揮者と議論、極端にはケンカになることもある。

ケンカならまだ良い。その切磋琢磨で新鮮な音楽が生まれる可能性があるからだ。逆のケースとして、オケ(その音楽の代表者がコンマス)が指揮者をバカにしきった演奏、ということもある。たとえば10数年前の日本の某国立放送局オーケストラの定期演奏会。

もともとそのオケのコンマスはふてぶてしくて嫌いなのだが、その日は指揮者を見下しているのが見え見え。指揮者はイギリスの室内オーケストラでコンサートマスターをやっていて指揮に転進した高名な指揮者。その端正な音楽は私は当時は好きだった。コンサートでは指揮者は聴衆に背を向けてタクトを振っている。ただそれを見ると、ある程度以上の指揮者なら、指揮者がオケにどのような音・表現を求めているかはよくわかる。私はその視覚の情報からその意図を汲み取り、音を補って聴いている。だから、オケの実際の音が少し違っていても、ちょっとしたミスがあってもあまり気にならない。指揮者の意図がわかるからだ。話を戻してその演奏会、オケ、特にコンマスが指揮者を完全に無視して勝手に自分(達)の音楽をやっており、指揮者の動作の情報で音楽を補正などできない演奏会だった。

そのオーケストラの定期演奏会では会員には会報の小冊子が配布される。その中に当時は団員のリレーエッセーのような記事が連載されていた。その中である団員が、「このオケは音楽的に優れた何人もの指揮者の下で演奏してきており音楽の蓄積がある。そこらのたいしたことの無い指揮者が違うことを言っても聞く耳を持たない。」というようなことを書いていた。このオケはその後D氏という優れた指揮者がトレーニングして上手くなったがそのエッセーはまだ下手な頃。下手なくせにプライドばかり高いどうしようもないオケ、と私は極めて不愉快に思い、以後、そのオケの演奏会には全く行っていない。そもそもプロオケ、特に放送オケは、いかなる指揮者のいかなる要求にもすぐに応える能力が必要と私は思う。自分の価値観にこだわっているようでは進歩はない。もっともそのD氏という優れた指揮者は、「こんなこともできないようではお前らはプロか」、とほとんど恫喝しながら厳しいトレーニングした、とか。恐らくメンバーのプライドはズタズタになったのだろう、D氏は常任指揮者をはずれしまった。しかしD氏の頃がこのオケの一番上手い時期だったと思う。当時車のFMで聴いたのだが、その透明感はとても日本のオケではなかった。

その後このオケのコンマスには、上記に書いたコンマスの数倍ふてぶてしい人が就任した。そして常任指揮者はD氏から団員の自主的音楽を重んじるA氏に変わった。A氏の最初の演奏会はFMで聴いたがD氏時代からは考えられない本当にひどいものだった。恐らくメンバーのプライドは癒されたろうが。

コンマスの話題から某オケの悪口になってしまった。コンマスの仕事についてはまだ重要なことを書いていないので、この項、続く。

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