コンサートマスターの仕事(2)

2007年7月25日 (水)

前回の記事コンサートマスターの仕事の続編。

前回の記事で一部引用した毎日新聞の記事コンサートマスターの仕事 曲解釈し、楽員を統率では次のように書かれていた。

大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会の開演直前に、指揮者の大植英次さんが急病で降板。急きょ楽員80人をリードしたのが首席コンサートマスターの長原幸太さん(26)だ。フォーレ「レクイエム」は合唱指揮者が代わりを務めたが、ブラームス「交響曲第4番」は長原さんがバイオリンを弾きながら、体を大きく上下させて音の出だしや切るタイミングの合図を送り、弓を持った右手で指揮もして、無事に公演を乗り切った。

コンマスの重要な仕事が、この「体を大きく上下させて音の出だしや切るタイミングの合図」。指揮者は普通にリズムどおりにきちんとは振らない。たいていほんのちょっと先の部分を振っている。半拍先をふっているのは当たり前。それは、先の音楽のイメージをより早く団員に伝えるためである。場合によっては1拍以上先を振っていて傍らからは指揮と音楽が全く合っていないように聞こえる・見えることもある。でもそれで良いのだ。そのとき、厳密に音の出だしの合図をするのがコンマスなのだ。団員も、必ず出だしを合わせなければならない箇所は指揮者ではなくコンマスを見る。そうでない箇所でも、団員は指揮者とコンマスをなんとなく視野に入れて演奏しているのだ。

余談になるが、音の出だしは完全に合っていれば良いということは全く無い。実は少しずれる必要がある場合も多い。特にドイツ古典物では、低音、つまりコントラバスからちょっとずつずれて音を出すことにより重厚な響きを作ることが必要となる。その場合コントラバス奏者は指揮者とコンマスを見てほんのちょっと、コンマ0.0何秒早く反応しなければならない。コントラバスは反応の鈍い楽器であるにもかかわらず、だ。このあたりは高等テクニックだが歴史のあるオーケストラなら自然にやっていることである。

これまた余談だが、オーケストラではこの出だしのことを「アインザッツ」という。ドイツ語だ。Wikipediaによれば

アインザッツ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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アインザッツ (ドイツ語: Einsatz)

本来「賭け」や「(労働力などの)投入」、「出動」などの意味があるが、音楽に関していう場合は休止後における歌い始め、奏し始めの瞬間のことをさす。Satzには「文章」という意味があり、ここでは楽節を指している。

出だしをあわせることを、略して「ザッツを合わせる」などという言い方をする。オーケストラでは音名もドイツ語だし、日本のクラシック音楽におけるドイツの強い影響がうかがわれる。(歴史的経緯が大きいだろう。そしてドイツ音楽がクラシック音楽のなかで一番上、のようなイメージがまだ日本にはある。それ以外、たとえばフランス近代・現代の音楽など非常に面白いと私は思うのだが。)

さてコンマスの仕事に話を戻す。音楽以外で一番重要なコンマスの仕事、それは団員とのコミュニケーションだ。東京のあるオーケストラのコンマスT氏は、「コンマスとは”コンパマスター”のこと」と看破した。より良い音楽を団員皆で作ってゆくために、これは重要な「仕事」らしい。

脱線しまくったがコンマスの仕事についての話は終わる。

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