カテゴリー:CD/映像

ノリントンの第9

2007年8月3日 (金)

先日このブログで演奏会案内/ベートーヴェン・第9という記事を書いた。ふと古楽器によるベートーヴェン・第9の演奏を聴きたくなり探したところ、ロジャー・ノリントン指揮ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ演奏の映像があったので早速見た(聴いた)。

この演奏、クラシカル楽器による演奏である。クラシカル楽器はご存じないかたも多いと思うが、バロック楽器とモダン楽器の中間に位置する楽器で、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェン当時の楽器と思えば間違いない。

弦楽器は弓がクラシカル弓。ヴァイオリンのクラシカル弓の形はバロックよりモダンに近いが弓の毛と棒の間隔が広いように見える。

金管楽器はナチュラル楽器。ナチュラルホルン、ナチュラルトランペット、サックバット(トロンボーンの前身)。ホルンはナチュラルなのでバルブはなく、右手のハーフミュートで音程を変えて演奏する。

木管楽器は、バロック楽器にキーが増えたような楽器。たとえばフルートは、バロック時代のフラウト・トラヴェルソと管の形は似ているがキーが増えている。オーボエはバロックオーボエとは形が少し異なり、現代のウィーンフィルで使用されているウィンナオーボエに形が似ている。キーの数もバロックオーボエよりはかなり多い。音色もウィンナオーボエに似ているがそれよりソフトである。

そしてこの演奏のピッチは恐らくA=430Hz。クラシカル楽器による演奏は通常430だ。現代のオーケストラのピッチである440~445(通常442)より約1/4音だけ低い。ちなみにバロック楽器のピッチは通常415で、フレンチピッチ(ベルサイユピッチ)は392である。

さてこの第9の演奏の特徴は、きびきびとした速いテンポ。ノリントンはベートーヴェンのメトロノーム指示を丁寧に守っているらしい。ただ2楽章のメトロノーム指示のないPrestoが意外に遅く、驚いた。ちなみにベートーヴェンの使用したメトロノームはテンポが狂っていたという説が一般的である。指示を守った演奏は少なく、守るとかなり速く感じられる。

もうひとつの特徴は、弦楽器のノンヴィブラート。その結果として、音程の悪さがかなり露呈している。難しそうではないのに音程が悪い、と思う箇所がかなりあった。第4楽章冒頭のコントラバスもかなり音程のずれた音があり、驚いた。ちなみに弦楽器は古楽器だから音程が悪い、ということは有り得ない。奏者のレベルの問題かもしれない。プロでもこうなのだからアマチュアはノンヴィブラートの真似をすべきではないかもしれない。

ちなみに管楽器は古楽器のほうが音程が悪いと思われているがそうではない。楽器によりある特別の音だけが不安定になることはあるが、それ以外の音はモダン楽器より音程が良い。

と少し悪口になったが、ノリントンの音楽そのものと指揮ぶりは大変変化に富んで面白いものだった。

バッハ/「フーガの技法」CD

2007年7月21日 (土)

私の高校生時代、うん十年前の話だが、毎日のようにJ.S.バッハの音楽を聴いていた。最初にバッハに興味を持ったのは、偶然買った管弦楽組曲第2、3番とブランデン5番のLP(レコード)。フルートがランパル、そしてミュンヒンガー指揮のシュトゥットガルト室内管弦楽団だった。(当時は古楽器の演奏は無かった。)非常に気に入り毎日のように聴くうちにバッハの音楽に興味をもつようになった。その数ヵ月後、テレビでバッハの「クリスマスオラトリオ BWV248」全曲を放送した。演奏はNHK交響楽団。指揮はマタチッチだったか若杉だったかちょっと記憶にないが。これを聴いてバッハの宗教音楽に目覚め、すぐにリヒター/ミュンヘンバッハOrch,Chorの「クリスマスオラトリオ」のLPを購入。それからはバッハの宗教音楽聴きまくりのバッハおたく生活が始まった。

カンタータばかり聴いているとたまに他の曲が聴きたくなる。そのとき買ったLPが「フーガの技法 BWV1080」だった。オルガンのみで演奏しているLPで、いまはCDで発売されている。演奏者はヘルムート・ヴァルヒャ。当時、この曲のLPは弦楽合奏かオーケストラの演奏ばかりで、ひとりでこの曲を演奏したLPはこれだけだった。結構難解な曲と思うが当時は高校生、毎日聴くうちに曲をすっかり覚え、都会に出たときにこの曲のスコアを買い、それを眺めながら聴く毎日だった。

私にとってバッハの最大の魅力はその対位法。典型的はコラールカンタータの第1曲の壮麗はフーガは昔もいまも聴いていてわくわくする。そのバッハの対位法の集大成がこの「フーガの技法BWV1080」だ。

ヴァルヒャのこの曲の演奏の特徴のひとつは、終曲。終曲である4重フーガが未完成のままバッハは亡くなってしまった。通常は補筆した版で演奏されるが、ヴァルヒャの演奏は、バッハの書いたところまでしか演奏していない。曲の途中でスパッと終わってしまうのだ。その直前には、バッハをあらわすBACHの音が使われている。バッハが自分を表すBACHの音を入れた、その直後でバッハの筆は終わっているのだ。その中途半端な音でヴァルヒャの演奏が終わったその瞬間、なんともいえないむなしさがこみ上げてくる。いまもその部分を思い出し、同じ気分になることができる。

さてこの曲は私はこのLPのみだった。CD時代になってもこの曲のCDは買っていない。そして我が家では、約20年前にLPプレーヤーは故障してしまいそのまま。要するにこの20年、この曲は聴いていないのだ。先日久しぶりに聴きたくなり、ムジカ・アンティクヮ・ケルンの演奏のCDを買った。もちろん、古楽器演奏であることを優先してこのCDを選んだ。この演奏は弦4本とチェンバロ。チェンバロのみで演奏している曲もある。聴いて、2つのことに気が付いた。ひとつは、チェンバロでの演奏は弦楽やオルガンのみと比較して、各声部を最も聞き分けることができる、つまり声部間の分離が良い、ということだ。これはおそらく、チェンバロの一つひとつの音が減衰することに起因しているだろう。もうひとつ気が付いたこと、それはこの演奏は古楽器なのだが時代遅れの演奏、ということだ。その大きな原因は、不自然なほどオーバーなmessa di voce。やりすぎだ。録音は1984年と、かなり古い。アーノンクールが端緒の古楽器演奏は約30年数年前と思う。その当時のアーノンクールと比較すると、技術的には「ムジカ・アンティクヮ・ケルン」が上だがやはりmessa di voce過多である。音も少し固い。というわけで、このCDは少し「負け」。もっと自然な演奏でこの曲を聴いてみたい。

全集版CD

2007年7月6日 (金)

私の学生時代、LP(レコード)は2千円以上の値段で、貧乏学生にはなかなか買えなかった。その金があればカセットテープをたくさん買い込み、FM放送を録音していたことを思い出す。いまのFMはクラシック番組もこま切れだが、昔は解説付きで全曲をきちんと放送していた。音質はともかく、それを録音すればLP代わりになったのだ。

そして数十年前、CDが発売された。CDプレーヤーは安いものでも10万円を超え、CDも1枚3~4千円した。時代が変わっていま、CDの価格は下落し、1枚当たり数百円相当のものもある。廉価版CDレーベルの王者はNAXOSとBrilliantだ。

最近は全集ものの廉価版CDが発売されている。それも、海外でかなり安く売っているサイトを見つけた。ミュンヘンのMAIL ORDER KAISERというサイトだ。支払いはクレジットでユーロ建て。いまユーロは高いのでちょっとつらいところだ。

以下、ベートーヴェン、モーツァルト、バッハの全集版CDを紹介する。

1.ベートーヴェン全集
Brilliantの全集。CD87枚で定価975ユーロのところ、このサイトではなんと49.95ユーロ。送料を約20ユーロ加え、本日のレート167円/ユーロで計算すると、約\11,700。CD1枚あたり約134円の激安だ。

ただ演奏はモダン楽器のようなので、私はまだ購入していない。シンフォニーは当時の楽器であるクラシカル楽器で聴きたいのだが、この全集では無理である。

2.モーツァルト全集
Brilliantの全集。CD170枚で定価298ユーロのところ、このサイトではなんと99ユーロ。送料を約20ユーロ加え、本日のレート167円/ユーロで計算すると、約\19,900。CD1枚あたり約117円の激安だ。

この全集はもっとユーロが安いときにこのサイトから買った。1枚当たり100円程度だったと思う。演奏は古楽器とモダン楽器両方。シンフォニーが古楽器(クラシカル楽器)なのは嬉しかった。またオペラも一部古楽器なので、私にはかなり楽しめる。170枚もあるので全部は聴いていない。シンフォニーを全部聴いたが、あとはちょっとだけ。聴いた範囲では演奏は悪くはない。資料としても価値はあると思う。

3.バッハ全集
Brilliantの全集。CD155枚で定価399ユーロのところ、このサイトではなんと99ユーロ。送料を約20ユーロ加え、本日のレート167円/ユーロで計算すると、約\19,900。CD1枚あたり約128円の激安だ。

この全集は購入していない。この内のカンタータ全曲のみを、日本の店で購入した。そのカンタータの演奏、古楽器は嬉しいのだがかなり下手で聴いていられない。特に合唱が下手で、アマチュア並みである。声楽ソロも、バスがまあ安定しているだけであとはNG。オケも、ヴァイオリンソロ、オーボエはそれほど上手くない。バッハのカンタータ全集はあとはアーノンクール・レオンハルト、ガーディナー、コープマン等があるが、それらは高いので安く買う目的でしかこのBrilliant全集の意味は無いかもしれない。

ということで、安い全集版CDは買っても満足できない可能性が大である。そうはいっても上記のモーツァルト全集はお買い得と思う。

なおこのサイトでCDを購入すると、迷惑なことがある。月に1、2度、店のあるミュンヘンからわざわざ郵便でダイレクトメールが届くのだ。中身はもちろんドイツ語のみ。そしてときどきドイツ語のみのE-mailも送信されてくる。ドイツ語が全く分からない私には迷惑メールなのだが、ドイツ語でどのように送信停止依頼メールを書いたらよいのか。。。

 

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